スペシャルインタビュー ♯01
TMB DANCER’S SHOW CASE vol.1開催を記念して、 連続インタビュー企画を実施!
記念すべき初回は、芸術監督の髙部尚子さんが登場。 バレエ団として初の試みとなる今回の公演。
髙部さんの想いは?どんな公演になるのか?インタビューで深堀していきます。
このインタビューシリーズでは、舞台裏の裏話や振付家・アーティストの情熱に迫ります。
第二弾も近日公開予定! 楽しみにお待ちください。
YouTubeにて日本のバレエ界を赤裸々に告白。
話題沸騰中の髙部尚子の想いとは。
──2017年に芸術監督に就任され、とくにここ2、3年はさまざまな改革を進められてきました。手応えは感じられていますか。
まだまだ道半ばです。スタッフの協力を得て様々に工夫を重ねてきましたが、雇用制度の改善をはじめ、やるべきことは山積みです。公演数は一時期の6倍まで増えていますが、さらにより多くの方々にバレエを楽しんでいただきたいと願っています。
──最近はとくに、YouTubeで本音トークやダンサー密着映像などを配信し、注目されています。
YouTubeでの配信内容を刷新しようというスタッフの提案に、最初は驚きました。取材では、4、5時間リハーサルをして疲れているところにズバッと鋭い質問が投げかけられて、つい本音がポロッということも(笑)。でも私やダンサーたちが本音で語ることで、注目してくださる方がぐんと増えてきたのは事実です。
── 一歩前進、ですね。
ですが、観たことのない方にとっては、バレエって少しとっつきにくいものかもしれません。ミュージカルをはじめとするエンターテインメント色の強い舞台のほうがわかりやすいし、楽しいと感じられる方が多いことも理解できます。そんな中でいままで通りのバレエ公演を続けても、新しいお客さまは来てくださらないでしょう。まずは、「ちょっと面白そう」と思っていただけるような舞台をお届けすることも、いまの私の仕事として重要なことなのかなと思っています。
── それが、今度のRED° TOKYO TOWER SKY STADIUMでの公演に繋がるのですね。実現に至った経緯を教えてください。
スタッフから、この会場はどうだろうという提案があったんです。床と壁面の全4面に大型LEDパネルを設えたホールというのは、インパクトがありますよね。踊りの楽しさを知ってもらうためには、映像の力を最大限に借りるのも面白いのではないかと感じたのです。
15作品がすべて新作。
この公演だけのスペシャルな振付家と
バレエダンサーのコラボ作品が勢ぞろい。
──上演作品はすべて新作ですか。
そうですね。谷桃子バレエ団では、谷先生の時代からずっと創作に力を入れていましたし、私が芸術監督に就任した直後にも、「Contemporary Dance Triple Bill」という公演(2017年7月)で島地保武さん、柳本雅寛さん、広崎うらんさんの新作を上演していますが、それはどちらかというとバレエ寄りの作品です。今回はもっと振り切って(笑)、よりエンターテインメント性の強いショーのような舞台にしたいと、外部からジャズダンスの振付家の方もお招きしました。バレエ団のメンバーの作品も含めて全部で15の小品を準備し、それらを組み合わせて構成する8つのプログラムを用意しています。
──バレエ団の多くのダンサーにとってジャズダンスは未知の世界ではないでしょうか。
もちろん、ジャズダンスを専門的に踊られている方には敵わないかもしれませんが、バレエのトレーニングをしている者ならではのラインの見せ方ができますし、振付家の方も、バレエ・ダンサーの特性を活かした振付けをしてくださるでしょう。
一人ひとりのダンサーの魅力を際立たせていくことも、今回の狙いの一つです。バレエではどうしても主役、ソリスト役のダンサーが注目されるものですが、今回は、ソロ、2人、3人で踊る小品を次々と上演することで、「大勢いるうちの誰か」ではなく、「この作品を踊っているこのダンサー」として見ていただける。個々のダンサーの魅力を見つけて、そのダンサーの活躍を楽しみに、次のバレエ公演へと足を運んでいただけたら、本当に嬉しく思います。お客さまの前でソリスト役として踊ったことのない若いダンサーも、もっと上に行きたい、活躍したいという目標を持っています。こうした機会に努力を重ねる皆の姿を見たいですね。
ジャズダンス・コンテンポラリー・ショーダンスなど、様々な分野の踊りにバレエダンサーが挑戦。
──外部から前田清実さん、湖月わたるさん、近藤良平さんという3人の振付家を招かれています。監督自ら新作を依頼されたのですか。
そうなんです。まずは前田清実さんですが、ミュージカルやストレートプレイの振付でご活躍されています。実は若い頃、年に一度開催されていた「青山バレエフェスティバル」出演時に、皆で清実先生の振付を踊った経験があるんです。その後も比較的近いところで仕事をしていましたが、今回「お力をお借りしたい」と申し出たところ、YouTubeの配信を見てくださっていて、「ぜひ協力したい」とご快諾くださいました。オープニング作品を含めた3作品とも、ミュージカルナンバーに振付けていただいています。
元宝塚歌劇団トップスターの湖月わたるさんは、清実先生にご紹介していただきました。振付を始められたのはごく最近のことだそうですが、「まだまだ自信はないけれど」とおっしゃりつつ、とても意欲的に取り組まれています。何か面白いことができるのではないか、と大いに期待しています。
──コンドルズ主宰の近藤良平さんは独特のボキャブラリーと楽しいダンス作品で知られています。
若い頃、同じ舞台で一緒に踊ったことがあったんです。私自身は良平さんの作品を踊る機会はなかったけれど、よく拝見していますし、面白い(笑)! 2作品のうち女性3人が踊る作品では、あえて手脚が長く、バレリーナ然としたダンサーを配しています。彼がどう料理してくれるか、楽しみですね。
また、今年から新たにバレエ団教師に加わった坂本登喜彦をはじめ、伊藤範子ほかバレエ団のメンバーも振付を手がけます。バレエらしい作品といえるのは、大塚礼子に振付をお願いしている『白鳥の湖』のみ。これまでにない、画期的な公演になると思います。
── 一部の作品ではオーディションでダンサーを選ばれていますね。
清実先生、湖月さん、良平さんに来ていただいてオーディションを実施しました。「ジャズダンスなんて無理!」という人も出てくるかなと思っていましたが、皆、果敢に挑戦していて、ちょっと感動しましたし、ホッとしました。映像の制作も進んでいます。映像スタッフの方も「こうした試みは初めてなので、とても楽しみ」とおっしゃっていますので、どうぞご期待ください!