TMB DANCER’S SHOW CASE vol.1
スペシャルインタビュー ♯05

TMB DANCER’S SHOW CASE vol.1開催を記念して、 連続インタビュー企画を実施!
大好評企画の5回目となる今回は、振付家の伊藤 範子が登場。バレエ団として初の試みとなる今回の公演。振付家として参加する伊藤に今回の公演への想いを伺いました。

このインタビューシリーズでは、舞台裏の裏話や振付家・アーティストの情熱に迫ります。
第6弾も近日公開予定! 楽しみにお待ちください。


新たに振付けた“花魁”と大塚アリスへの期待


──今回の公演では、新人ダンサーの大塚アリスのためにソロの作品を振付けられています。どんな作品になりますか。

アリスさんには“花魁”を踊ってもらいます。以前、葛飾北斎にまつわる架空の物語を『HOKUSAI』という1幕のバレエに仕立てて上演したのですが、その登場人物で、北斎に思いを寄せている女性という設定です。本編にはなかった花魁のソロを、今回、新たにアリスさんのために振付けました。『HOKUSAI』のサブストーリーのような位置付けですね。

──花魁の衣裳をつけた彼女の写真がとても印象的と評判です。

私も撮影に立ち会いました。フィッティングする前から、「アリスさんに絶対に似合う!」と思っていたのですが、本当にぴったりでしたね。彼女は素晴らしいスタイルの持ち主で、とても綺麗なラインを出せるダンサーですが、いっぽうで楚々とした感じがあって、和の雰囲気も出せる人だと思っていました。

──大塚自身は、どんな気持ちで取り組んでいる様子ですか。

事前の打ち合わせでこの作品のことをお話ししたら、興味を持ってくれて、やりがいも感じてくれているようです。花魁の、北斎を思う気持ちを表現できるところまでいけたらいいなと思っていますが、4分ほどの短い作品ですから、どこまで伝えられるかはわかりません。でも、何か思いを持って踊るのと、ただ動きを追うだけとでは、全然違うものです。主役を踊るダンサーを目指すのであれば、テクニックだけでなく、表現も大事。どこまでチャレンジしてもらえるかなと思っています。
音楽については、アリスさんはアダージオのようにゆっくりとした曲が好きだと話していたので、彼女自身が気持ちよく、入り込んで踊れる曲をと、ドビュッシーのピアノ曲を選びました。ただ、東京タワー、あのライヴ会場のようなスペースを実際に見てみたら、これはピアノ曲ではちょっと軽すぎるかなと感じたので、同じ曲でもヴァイオリンやドラムが入った、もう少し強めのアレンジのものにしてみました。

──お客さまの前でこうした作品を踊ることは、彼女にとってどんな挑戦になりますか。

彼女はわりと、こう、伏し目がちに踊るタイプなんですよね。そこを今回はもっと、目線を上げて、キラキラさせて踊ってもらえたらいいなと思います。表現者として、呼吸をたっぷりと使って動くことも課題としてありますから、振付の中でトライしていこうと思っているんです。
ですが、ステージに立って、お客さまの前で踊ることで感じること、得られることってたくさんあるんです。私自身もそうでした。とくに今回は、同じ作品を何回も踊りますから、初日のステージから最後の回まで、彼女がどう変化していくか、ということも見どころになると思います。

振付家としての軌跡。今回の公演にかける想いとは。


──『HOKUSAI』は2018年のバレエ団公演で初演された作品ですが、バレエ団外の舞台でも数々の作品に携わってこられました。ダンサーとして活躍されている頃から振付家を目指していたのですか。

髙部芸術監督と同じ世代でプリマとして踊っていましたが、現役の頃からアカデミーの指導の仕事もするようになっていて、子供たちのために小品を振付ける機会がたびたびあったんです。いくつか作品を創っているうちに、振付って面白いなと思うようになって、しかも、周りの方が褒めてくださる(笑)! 

そんなある時、新国立劇場のオペラの制作の方から、オペラ『カルメン』の新制作の舞台でイタリアの方が振付を手がけるので、再演を見越して、振付を覚え、振り起こしをするために振付補佐に入ってくれないかというオファーがあったのです。2002年の舞台でしたが、そのお仕事がきっかけとなって、オペラをはじめとするいろんな舞台での振付の話をいただくようになりました。あれよあれよという間に、でした! 

もちろん、バレエ団でもいろいろと創作をさせてもらってきました。2013年には、当時芸術監督を務められていた望月則彦先生(故人)に「1時間ものの作品を創ってみないか」と声をかけていただき、『道化師〜パリアッチ〜』を創作しています。望月先生はじめ、いろんな方に育てていただいたなと思います。

──イタリアで学ぶ機会を得られたのはその後でしょうか。

2016年に文化庁在外特別研修員としてミラノ・スカラ座のバレエ団とバレエ・アカデミーで研修させてもらいました。イタリアはバレエ発祥の地といわれますし、何よりもあの豊かな色彩感覚! 一度行っておきたいと考えていたのです。帰国後に振付けたのが『HOKUSAI』で、同時に再演した『道化師〜パリアッチ〜』とともに、文化庁芸術祭優秀賞をいただきました。私の場合、振付といっても、これらの作品のように、演出を含めて、総合的に作品を創っていくことが好きなんですね。今回も映像とコラボレーションする舞台ですから、ちょっと燃えます(笑)。

──今回の公演、見どころはどんなところにあると思いますか。

アリスさんのことをまだご存じない方が多いと思うのですが、お客さまに、彼女がとても魅力的なダンサーだということを知っていただきたいですし、応援したくなるようなダンサーになってもらえたらなとも思います。今回は本当に新しい試みではありますが、バレエだって、芸術であると同時にエンターテインメントの一つでもある。そんなバレエとともに、ジャズだったり、コンテンポラリーだったり、さまざまな手法のダンスを一度に楽しんでいただける、なおかつ心に響く公演になると思います。どの作品も、ダンサーたちそれぞれが振付家と一緒に創作していくので、彼らのこれまで見えてこなかった新しい側面も見えてくるはずです。ぜひ楽しんでいただけたらと思います。

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